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戦後日本の労働組合が勝ち取った「大幅賃上げ」が例外なく物価上昇・インフレを背景としていたことを考えると、いま賃上げに「最も不利な状況」であることは否めない。
ついで、はどうか。 統計史上初の、完全失業率5%台である。
「求職あきらめ組」を含めたら実質の失業率は10%強で、2桁に上る。 いま労働市場は売り手(労働者)にあきらかに不利である。
財界・経営者は、みずからリストラや生産拠点の海外移転で失業者・半失業者をつくりだし、これをテコに賃下げを押しつけている点が重大である。 「首あっての賃金だ」という経営者らの言い分のもとに、賃金が値切られつづけている。
いま一つ、はどうか。 とという「2重の不利」をはね返して賃上げを実現するには「大規模なストライキ」しかない。
いくら「賃上げの正当性」を訴えても、それを受け入れる経営者・支配層ではない。 春闘は「研究会」ではない。

ではいま「大規模スト」の条件はあるか。 ない。
それをみこして、経営者・支配層が「大幅賃下げ」の総攻撃をかけてきている。 以下、その構図・特徴をみる。
「賃上げの3大ルート」の第一は、いうまでもなく春闘である。 企業別労組がほとんどの日本では、春闘抜きで「意識的な賃上げ」はありえない。
その春闘の「魂」は、統一闘争である。 とくに企業間の競争条件の均等化に配慮しつつ賃上げをねらう「産業別統一闘争」が、決定的に重要だ。
ところが財界・経営者はいま、同じ産業でも「勝ち組」・「負け組」に分かれるなどバラバラの経営状態であり、とても似たような賃上げをできる状況にないとして、産別「決定」をとことん忌避している。 では、企業別にまともに団体交渉をおこなっているかといえば、これも形式化・形骸化し、結局、事実上「企業対個人」で賃金が決められているケースが多い。
「賃金決定の個別化」なのだ。 賃金決定の「先祖返り」といってもよい。
歴史を振り返るまでもなく、どの国でも例外なく、個々バラバラの賃金決定では資本家に有利過ぎるから、ある時期から労働者は命がけで労働組合をつくり、(その他の要求もそうだが)賃上げの条件を整備してきた。 くわえて日本では55年から「春闘」という独創的なたたかい方があみ出された。
財界・支配層は、いまこれを破壊している。 「成果主義賃金」など「個別評価型賃金」が、その破棄の重要な「武器」「弾薬」として利用されている。

第2は、人事院体制であり、これへの攻撃である。 その勧告は、民間準拠ということで、春闘の結果に大きく依存している。
ついに2002年の勧告はマイナス(マイナス2・021%)になった。 この勧告の線で公務員賃金が決定され、すでに02年12月から施行されている。
こうして初めて公務員、そして地方公務員の月例賃金が下がる。 その影響は大きく、これに事実上依拠してきた民間病院や私学その他多くの労働者の賃金もマイナスとなろう。
とくに問題なのは、人事院は「マイナス勧告」をおこなうことができるのか、という点だ。 敗戦後まもなく、公務員にたいする労働基本権制限の「代償措置」として人事院体制が設けられたという経緯からして、それは(きわめて不十分ながら)賃金その他労働条件の改善・向上のための制度であったはずだ。
「スト権なし」では「丸腰のサムライ」のようなもので、これでは公務員の労働条件等の改善・向上が危ういということで「代償措置」がとられた。 そうである以上、そこは賃金の改悪・切り下げ勧告などできない公平に考えればこうなる。
それをあえてやったのだから、これはあきらかに人事院体制の破壊行為だというほかない。 第2は、最低賃金制である。
(未組織の公務員でもない)パートタイマーのような労働者たちの賃金底上げの制度的保障が最低賃金制であるが、これも運動の弱さを反映して本来の機能が発揮できず、賃金抑制的側面が強まっている。 もともと財界は、賃金にたいする法的規制を嫌悪し、その全廃を夢見ている。

現実にはそうもゆかぬので、屋上屋を架すものとして産業別最低賃金の廃止を70年代から主張してきた。 そのため、廃止にはいたらなかったものの、きわめて限定的な「新」産業別最低賃金となっている。
最新の変化の特徴としては、02年度の地域別最低賃金の改定据え置きが210都道府県におよび、上乗せされたところでも「一円」という微増にとどまったのである。 公務員賃金の引き下げと比べ「まあまあ」の印象を与えるかもしれないが、そうではない。
そもそも時間額「664円」(全国加重平均)という超低額で、すでに減額しようのない低水準にあること、若干「定昇」を含むと解釈されていることなどを考えあわせると、人事院勧告より「まし」とはいえない。 表示が「時間額」にしぼられた点も、生計費との関連をますますみえにくくしたという問題点を残す。
いまやこの国の最低賃金制は、賃金の底上げ機能をほとんど失い、労働者保護とは逆の賃金抑制機能に傾斜している。 この意味で最低賃金制破壊がすすんでいる。
いまほとんどの企業で賃金体系が変わったか、変わろうとしている。 公務員も例外ではない。
賃上げ拒否・賃下げ春闘になれば、一段と賃金体系操作が増えることになろう。 だが、賃下げによる労働者の不満を賃金体系操作でかわそうとしても、そのねらいが以下のところにあるため、労働者との矛盾は深まる一方だろう。
めざす賃金体系の名称は「成果主義」「能力主義」など企業により異なるが、「年功賃金つぶし」という点では共通している。 第一に、賃金体系の変更により「人件費の大幅削減」をねらっている。
その見込みが立たなければ、わざわざ変更する意味がないということだ。 「国際競争力強化」を理由に人件費の削減を繰り返し主張している企業・経営者が、賃金体系変更で人件費が増加するような「へま」をするはずがない。
財政難を訴える国や自治体でも、ねらいは民間と同じである。 第2に、より刺激的な賃金体系にすることで、ますます労働者どうしを競わせ、労働強化と団結破棄をねらっている。
第3に、労働力の出し入れ(労働力流動化)をより効果的におこないたい、というねらいがある。 勤続年数を重視する年功賃金だと、なかなか中高年が会社をやめてくれない。
また、たとえばバリバリの30歳ぐらいのハイテク技術者を「特別に高い賃金」で採用することもできない。 「成果主義賃金」の一種である「年俸制」であれば、その「障害」を払拭し労働力の入れ換えが「自由」になる、というわけだ。

なおいま、「成果主義イデオロギー」が賃金体系の分野にかぎらず、労働者管理の全般にわたって系統的に注入されている。 「合理主義」の装いをもつこの巧妙な攻撃にたいして、労働組合としても、きめこまかな対応が求められている。
この国で「ワークシェアリング」が日常の話題に上るようになって、まだ数年である。 完全失業率の「5%台突入」が、その主たる背景であろう。
雇用の維持・創出が「ワークシェアリング」により、ある程度実現できるのではないか、というほのかな期待が、労働者のあいだに存在する。 日本経団連など財界は、そこに目をつけワークシェアリングとは似て非なる「日本型ワークシェアリング」を各企業が導入するよう、強く促している。

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